新潟中越地震(InSAR解析)
2004年10月23日17時56分頃、新潟県中越地方をM6.8の大地震が襲った。図は、2004年10月1日と2004年10月25日にカナダのRADARSAT衛星SARデータ(*1)を解析して得られたもので、新潟中越地震によって生じた地表面変化を表している。ここで使用した解析方法は干渉処理(インターフェロメトリ:Interferometry、以下InSAR)と呼ばれ、異なるニ時期のSAR画像の位相差を算出して、その間に発生した地表面変化を計測する技術である。InSARで計測できる地表面変化は衛星と地表面を結ぶ方向の変化であり、RADARSATの場合、位相1サイクル(2π)が約2.8cmの変化に相当する。位相差の増加(青−赤−黄−緑)は地表面が衛星から遠ざった事を意味し(六日町〜小出町)、位相差の減少(緑−黄−赤−青)は地表面が衛星に近づいた事を意味する(長岡市〜小千谷市)。このような縞が現れない緑一色の所は植生地域であり、位相情報の精度が悪く、地表面変化を計測できなかったと考えられる。
RADARSATは植生透過能力に劣るCバンド(波長は約5.6cm)を採用しており、本来、植生地域にInSARを適用する事は困難である。2005年9月に打ち上げ予定の陸域観測技術衛星ALOSに搭載されるPALSARは、植生透過能力に優れたLバンド(波長は23.6cm)のSARセンサであり、本地域のように植生豊かな山岳地や熱帯雨林地域にでもInSARを適用する事が可能である。地震や火山活動といった甚大な被害をもたらす大規模災害が発生した際には、緊急観測を出す事で数日以内に被災地を観測する事も可能になり、ALOS/PALSAR打ち上げに大きな期待が寄せられている。
(*1)カナダ航空宇宙局所有
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