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ここから,サーモグラフィでいろいろな環境をみていきます.
まずは,ごく身近な「学校」の話題からはじめましょうか.

皆さんの学校の校舎内の夏の暑さ,冬の寒さはどうですか?ん,あまり意識したことがない...そうですか. クラスに勉強のできる人がいるなら,早速その席に座らせてもらいましょう! 以外に居心地のいい席かもしれませんよ・・・ そんな話題をお届けします.
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上の写真,まあ,どこにでもある小学校教室の風景です.この中を早速サーモグラフィでみてみましょう.下は,天気の良い夏の昼間の状況です.窓は南を向いていて,窓もカーテンも開けっ放しです.児童は写っていません.
図中に書き込んであるとおり,窓から強烈な日射がはいりますね.すると,前の右の方に座っている人からは,黒板に光が反射して字が見えない,ということがあります.経験はありませんか?

そして・・・天井の温度が高くて35℃以上です.室温より高いのは,校舎の屋根に太陽光があたって発熱し,屋根の中を熱がジワジワと下に伝わってきたからなのです.すると,席に座っている人の頭の上に,温度の高い面をかざした状態になります.天井からは大量の赤外線が出て,児童の頭に当たります.「頭が暑い」「ボーっとする」のは,必ずしもその子の不真面目さが原因,とはいえないわけですね.

・・・この,「太陽光があたって,温度が高くなって,大量の赤外線が出る」という現象は「再放射」とよばれています.
では,小学校はそのような「夏暑い」校舎ばかりなのでしょうか?・・・そんなことはありませんよ.少し,工夫された学校をみてみましょう...これは新潟県N市につくられた新しい小学校の例です.
南側にバルコニーがあるぞ.
ガラスはペアガラス,暖房はFF式.
気密性が高くて暖かい空気が逃げない.
なんと,オープンスペースがある.隣の教室もまるみえだ.
なんと屋上にプールがある.気持ちよさそうだ.
オープンスペース側から教室内を撮影してみました.最上階でもこのように天井はあまり暑くなりませんね.プールがあるので屋根の表面温度があがりにくいことと,屋根の厚さが分厚いことの効果ですね.

それにしても,最近の小学校も変わってきました.大変なカルチャーショックを受けますね.こういう校舎で勉強したら,人生が変わったかも・・・そう思ったあなた,考え過ぎです(笑).

少しだけ,最近の学校建築の話題を.

「ホルムアルデヒド」ってご存知ですか?化学式ではHCHO.建物の建材や家具(特に,接着剤など))に多く含まれている化学物質で,これの比較的濃い空気を長時間吸うと,目,皮膚,呼吸器を刺激することがある,というものです.
どんな建物でもそうなのですが,建てたばかりのときにはどうしてもホルムアルデヒドの濃度は高い傾向があり,年を経るにつれて薄くなるという傾向があります.
このホルムアルデヒドの濃度は,気温や建物内部表面温度が高いときに出やすいといわれています.幸い,上記の校舎では厚生労働省の基準値より低く問題はありませんでしたが・・・

最近「不登校」の問題が注目されていますね.学校に来ると気分がすぐれない,頭が痛い,などをうったえて,そのうち学校に来なくなってしまうというものです.これまでは個人のメンタルな問題,と片付けられがちだったのですが,実はこれが学校校舎のホルムアルデヒド濃度とも関係がある,という可能性も考えられるそうです... もし本当だとしたら,怖いですね...
古い校舎の教室
新しい校舎の教室
いずれも夏季の晴天日,昼間に行った暑さ・寒さのアンケート結果の例.
ちなみに,それぞれの教室で,座っている児童に「どのくらい暑いですか」とアンケートをとりました.赤いところほど暑く感じる場所なのですが,明らかに新しい校舎の教室では暑さが軽減していますね.これなら勉強しやすいかもしれません

(・・・いや,あくまで「しやすいかも」です.結局は本人次第「かも」しれません・・・)