事業紹介
HISUI
ISS搭載型ハイパースペクトルセンサ
■HISUIプロジェクト
HISU I (Hyperspectral Imager SUIte) は宇宙実証用のハイパースペクトルセンサです。
陸域を全球規模かつ高分解能で観測することを目的とした光学センサにおいては、現在は十数バンドの波長帯を観測するマルチスペクトルセンサが多く運用されています。
そして将来に向けては、植生や鉱物等をより詳細に分類するために、連続する波長帯を全て細かく観測することができる光学センサ、いわゆるハイパースペクトルセンサが非常に有効であることが明らかになっています。
その一方で、現在までに軌道上で運用されたハイパースペクトルセンサは、限定された地域しか観測されておらず、そのデータも十分な品質に達していない状況にあり、全球規模で高品質のハイパースペクトルデータが要望されています。
ここのような状況の中、ハイパースペクトルセンサの計画あるいは開発が欧米を中心に進んでいて、日本においてもHISUIプロジェクトが進んでいます。HISUIは2019年12月に打上げられ、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」に搭載されました。全球規模で観測可能なハイパースペクトルセンサが実現することになりました。
HISUIの、可視域から短波長赤外域をカバーする連続的な185バンドのデータにより、資源分野で必要な多数の鉱物の分布状況、環境分野で必要な森林や草本の詳細な分類、農業分野で必要な農作物や土壌の状態の把握など、現状では得ることができない新たな情報が得られることとなり、衛星リモートセンシング技術を新たなステージに引き上げてくれる潜在力を有しています。
ハイパースペクトルとは
ハイパースペクトルセンサの最大の特徴は、高波長分解能を有し、対象物の性質・物性を示す反射スペクトルを広範囲の波長帯で連続的に得ることができることです。植物(9月の水稲)のスペクトルを例に、マルチスペクトルセンサとハイパースペクトルセンサとの反射スペクトルの違いを模式図(下図)に示します。
マルチスペクトルセンサとしてはASTER(9バンド)を想定し、ハイパースペクトルセンサとしてはHISUI(185バンド)を想定しています。
計測しない波長の部分が多いマルチスペクトルセンサと異なり、連続的に測定できるハイパースペクトルセンサでは、よりきめ細かで多彩な情報が取得できます。
HISUIセンサの概要
HISUIのハイパースペクトルセンサは、可視域から短波長赤外域まで高波長分解能で連続的な波長情報の取得を行います。
近年、ハイパースペクトルデータへのニーズが高まり、海外においても、ドイツのEnMAPなど、複数のハイパースペクトル地球観測衛星の開発計画が進行中です。
観測計画の概要
長期観測シミュレーションと運用方針の策定
HISUIでは、過去の衛星観測による全球雲分布データを利用して、1年以上の期間の観測シミュレーション(長期観測シミュレーション)を行います。その結果に基づき、HISUI運用方針の策定や、そのために必要なリソース量(観測時間、データダウンリンク量等)を算出します。
1日あたりのデータ取得量<300GBの3年運用で計算した長期観測シミュレーションの例。
色は雲無し画像が取得された回数を、白は雲無し画像が3年間で一度も取得されなかったことを示します。この例においては3年間で全球の陸域浅海域の80%以上について良好な雲無し画像が取得された結果が得られました。
観測スケジュールの作成
観測スケジュールは、長期観測シミュレーションで定められた運用方針や機器制約等に基づき、スケジューラと呼ばれるソフトウェアにより数日毎に自動作成し、センサに送信されます。さらに観測されたデータに対しデータ処理の過程で被雲状況や画質の評価を行い、良好なデータが取得されたと判断された地域については、その後の観測対象から外されます。一方良好なデータが取得されなかった地域については、次の機会で観測するように設定されます。
データ処理の概要
HISUIセンサで得られた生データは、ハイパースペクトルセンサ特有の現象として、光学系の収差やミスアライメントから生じる、キーストーンやスマイルと呼ばれるデータの歪みが想定されます。
このような、物理的な現象を内包しているセンサ出力データを、データ処理によって補正し、輝度・波長・幾何学的位置の品質が管理されているプロダクトを生産し、ユーザに提供します。
また品質管理のために、打上前に室内測定において十分なセンサ校正を行うとともに、打上後も時間の経過と共に変化する感度や温度に対応するため、多種多様な校正を実施することを計画しています。
想定利用事例
【岩石鉱物分類】
資源探査に有用な鉱物を同時に10種以上も同定できます。
【油徴探査】
海底油田の場所や、事故による流出油を検知できます。
【土壌塩分濃度】
農地における塩害の進行を早期に発見できます。
【牧草の生産性評価】
牧草と雑草の区別や、牧草の乾物重量を推定できます。
【樹種分類】
多くの樹種や群落を高精度で分類できます。
【小麦の収量と品質】
小麦圃場の抽出や、小麦の収量や品質を推定できます。
【泥炭湿地林の劣化】
泥炭湿地林の劣化度合いを推定できます。
【水深分布】
浅海域の水深が計測できます。
HISUIガイドブック
HISUIプロジェクトでは、上記の想定利用事例を含む16の事例をまとめたHISUIガイドブックを作成しました。HISUIガイドブックには、利用事例だけでなく、リモートセンシングの概要やデータの利用方法についても詳しく説明されています。
HISUIガイドブック (PDF、28MB)
【研究公募】
HISUIプロジェクトでは、HISUIデータの様々な分野における利用実証を促進するため、対象分野・利用分野にかかわらず広く利用研究を公募するための枠組みとして、HISUIデータ利用に関する研究公募を実施しています。
2024.03.31 研究公募は終了致しました。
HISUIプロジェクトのホームページを開設しましたので、HISUIの詳細についてはこちらをご覧下さい。
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