インパクトクレーター


http://www.pd.astro.it/hosted/MOSTRA
/E-MOSTRA/G2110ACM.HTM
月の表面にはエクボのような穴が無数にあります(右図)。これは宇宙を漂う隕石が月に衝突した際にできたもので,インパクトクレーターと呼ばれます。

月と同じように,地球にも隕石は多数衝突しています。しかし,地球には大気があるため,小さな隕石は大気による摩擦熱で燃え尽きてしまい,地球表面には達しません。しかし,大きな隕石の一部は燃え尽きることなく地球表面まで達します。そして,巨大なものになると,衝突時の衝撃はすさまじく,地球の環境を一瞬にして変えてしまう可能性もあります。

http://www.ahc.gov.au/explore
/geofossil/window.html

これまでに地球に衝突した最も巨大な隕石の一つと考えられているものが,6500万年前にメキシコのユカタン半島北部に直径180kmものインパクトクレーターを残した隕石であり,その直径は10km程度であったと考えられています。この隕石の衝突により,地球環境が激変し,当時地球上に繁栄していた恐竜を一瞬にして絶滅させたとする説もあります。

地球表面の7割は海なので,大きな隕石であっても平均的に7割は海に落ちることとなり,インパクトクレーターとしては発見されません。また,降雨による風化や植生による被覆などで発見されにくかったり,インパクトクレーターのような地形であっても実際は火口や貫入岩であったりと,インパクトクレーターの発見は必ずしも容易ではありません。インパクトクレーターであるかどうかの判断は,最終的には土の成分を分析するなどで行います。

世界最初に確認されたインパクトクレーター,バリンジャー・インパクトクレーター(米国)

 米国アリゾナ州北部,フラッグスタッフに近いコロラド高原にある直径約1.3km,深さ約145mの
バリンジャー・インパクトクレーターです(メテオールクレーターとも呼ばれています)。隕石が衝突した際に生成される鉱物であるコーサイトやスティショバイトの発見によって世界で最初にインパクトクレータとして証明されました。
 衝突年代は約5万年前で,孔の大きさから
直径約80m,重さ約200万トンの隕鉄が秒速約20kmで衝突したと考えられています。乾燥地であるためクレーターの原型がよく保存されており,衝突によって形成された様々な地質構造が見られます。
世界最大級のインパクト・クレーター,フレダフォート環状構造(南アフリカ共和国)

 南アフリカ中央北部,ヨハネスブルグ南西約120kmに位置する
フレダフォート環状構造。この環状構造は未確定のインパクトクレーターではありますが,隕石の衝突環境下で形成される鉱物が産出することなど多くの地質的な特徴から,約20億年前に形成されたインパクトクレーターであると考えられています。直径は100km以上に及び,インパクトクレーターと推定されるものの中で世界最大規模のものであり,この画像はその南西部の一部を撮影したものです。
カナダ楯状地の巨大環状構造,マニクーガン・インパクトクレータ(カナダ)

 カナダ東部,ケベック州のラブラドール高原南部にある
マニクーガン・インパクトクレーターです。未確定ではありますが,世界最大規模のインパクトクレーターのひとつとされています。およそ2億年以上前の隕石の衝突によって生成され,氷河の南下・後退,その後の浸食過程により削り取られて低くなったものとされています。
 現在ではこのクレーターはマニクーガン貯水湖として豊富な水資源を蓄え,その貯水は途中で大水力発電所を通り南下してセントローレンス川に流れ込んでいます。
 地球では地殻変動や浸食などの絶えまない地形変化などにより,インパクトクレーターの形跡の大半は消し去られていますが,カナダ楯状地のような比較的安定した地域には集中して発見されます。
確定された第2の規模のインパクトクレーター,ウォルフクリーク・インパクトクレーター(オーストラリア)

 オーストラリア中央北部,西オーストラリア州と北部準州の境界付近に位置する
ウォルフクリーク・インパクトクレーターです。その形状が比較的良く保存されているもののひとつで,直径約840m約30万年前の隕石の衝突により形成されました。確定されたインパクトクレーターでは,米国バリンジャーに次ぐ大きさをもっています。
 ほぼ平坦な砂漠の中に,円形構造が明瞭に認められます。クレータの周縁部は比高25mで,内部のへこみも周囲から25m低くなっています。クレーター周囲には衝突で生成された物質や隕鉄のかけらが発見されています。
 この地域南方の内陸部には広大なグレートサンディー砂漠,ギブソン砂漠が広がり,人間の行く手をさえぎっています。